エヴァンゲリオンは、名作として語られる一方で、初見ではかなり分かりにくい作品です。
最初は、使徒と戦いながら世界を守るロボットアニメのように始まります。
けれど物語が進むほど、焦点は戦いの勝敗だけではなく、碇シンジという少年の内面へ向かっていきます。
なぜ人と近づけないのか。
なぜ他人の言葉が怖いのか。
なぜ自分がここにいていいと思えないのか。
エヴァンゲリオンが難しく感じる理由は、用語が多いからだけではありません。
外側の戦いを描いていた物語が、いつの間にか「自分と他人の距離」を描く内側の話へ変わっていくからです。
この記事では、エヴァンゲリオンを初めて見る人、あるいは見たけれどよく分からなかった人に向けて、TV版を見やすくするための視点を整理します。
細かい考察ではなく、まず「何を見ればいいのか」を置いておくための記事になっています。
エヴァンゲリオンを見る前に押さえる3つの視点
エヴァンゲリオンを最初からすべて理解しようとすると、かなり大変です。
用語や設定を追うよりも、見る視点を分けたほうが入りやすくなります。
3つの視点で分けてみることで整理されるかも知れません。
最初に分けて見ると、エヴァンゲリオンは入りやすくなる。
理由1:世界を救う話から、シンジの内面へ移っていく
エヴァンゲリオンは、序盤だけを見ると分かりやすい作品に見えます。
謎の敵である使徒が現れ、NERVという組織がそれに対抗し、シンジたちはエヴァに乗って戦う。
この流れだけを見ると、世界を守るロボットアニメとして受け取ることができます。
けれど物語が進むほど、作品の焦点は少しずつ変わっていきます。
使徒を倒せるかどうかだけではなく、シンジが自分をどう受け取るのか。他人の言葉をどう受け止めるのか。誰かに必要とされることを、どう感じるのか。
終盤になるほど、外側の戦いよりも、シンジの内面が強く前に出てきます。
なので、ここで置いていかれたとしても、それは自然なことです。
エヴァンゲリオンは、最初に見えていた物語の目的地とは違う場所へ、少しずつ進んでいく作品だからです。
©カラー/Project Eva.
理由2:ATフィールドは、戦闘用語であり心の距離でもある
エヴァンゲリオンには、ATフィールドという言葉が出てきます。
最初は、使徒やエヴァが使う防御の力として見れば大丈夫です。
ただ、エヴァではこの言葉が、戦闘だけではなく、人と人のあいだにある距離の説明にも使われます。
誰かに近づきたい。
でも、近づかれるのは怖い。
分かってほしい。
でも、分かられることも怖い。
そうした人間関係の距離感を考える入口として、ATフィールドを見ると、エヴァンゲリオンは少し入りやすくなります。
ここで細かい設定をすべて覚える必要はありません。
まずは、ATフィールドを「自分と他人のあいだにある境界」として受け取っておけば十分です。
ATフィールドは、戦闘の壁であり、人との距離を考える入口にもなる。
理由3:人類補完計画は、最初から詳しく知らなくてもいい
エヴァンゲリオンが分かりにくく感じる理由のひとつに、人類補完計画があります。
名前だけ聞くと、かなり大きくて難しそうな計画に見えるし、
実際、物語の深い部分に関わる重要な言葉です。
ただ、初めて見る段階では、その仕組みを細かく理解しようとしなくても大丈夫です。
まずは、人類を救うための大きな計画があり、その計画がシンジたちの物語の裏側で動いている、と受け取っておけば十分です。
そして後半になるほど、その計画は「人と人の境界をどう扱うのか」という問題に近づいていきます。
最初から全部分かろうとするよりも、見終わったあとで振り返るくらいの距離感で見たほうが、エヴァンゲリオンには入りやすいと思います。
登場人物は、まずシンジを中心に見る
エヴァンゲリオンは多くの人物が登場しますが、入口としては、まず碇シンジを中心に見たほうが分かりやすいです。
TV版のエヴァンゲリオンは、世界の謎をすべて解く話というより、シンジが自分と他人の距離に向き合っていく物語として描かれているからです。
そのうえで、周囲の人物を見ていくと、それぞれがシンジとは違う形で孤独や距離を抱えていることが見えてきます。
碇シンジ
物語の中心。終盤では、世界の謎よりも彼の内面へ焦点が寄っていく。
綾波レイ
他者との距離や、自分という存在の不確かさを感じさせる人物。
惣流・アスカ・ラングレー
強さの裏にある防衛や孤独を見せる人物。
葛城ミサト
大人として支える側にいながら、自分自身も揺れている人物。
NERVと使徒は、最初にざっくり分かればいい
エヴァンゲリオンを見る前に、組織や用語をすべて覚える必要はありません。
入口としては、まずNERV、使徒、エヴァンゲリオンの3つが分かれば十分です。
NERVは、使徒に対抗するための組織
使徒は、怪獣のようなもの
エヴァンゲリオンは、使徒と戦うためのロボット
最初はそれくらいの理解でいいと思います。
物語が進むにつれて、NERVの背後にある思惑や、エヴァンゲリオンが単なるロボットではないことが少しずつ見えてきます。
最初から全部理解しようとすると、かえって作品に入りにくくなるので、
まずは「NERVが使徒に対抗している」という大きな形だけ押さえておけばいいと思います。
NERV
使徒に対抗するための組織。シンジたちはここでエヴァに乗る。
使徒
外側から現れる脅威。序盤では、物語を動かす分かりやすい敵として見える。
エヴァンゲリオン
ロボットのように見えるが、物語が進むほど単なる兵器ではないことが見えてくる。
見る順番は、公開された順で入りやすい
エヴァンゲリオンは、TV版、旧劇場版、新劇場版 前3作(序・破・Q)、シン・エヴァンゲリオン劇場版があり、どこから見ればいいのか迷いやすい作品です。
入口としては、基本的に公開された順に見るのが分かりやすいと思います。
まずTV版で、作品の空気とシンジの物語を受け取る。
次に旧劇場版で、TV版終盤では見えにくかった外側の出来事を別の角度から見る。
そのあと新劇場版を見ると、時代を経てエヴァンゲリオンがもう一度語り直された流れとして受け取りやすくなります。
それぞれの作品で何が分かるのかを、最初から細かく知る必要はありません。
まずは、エヴァンゲリオンという作品がどのように広がっていったのかを、公開順に追ってみるのがいいと思います。
エヴァが社会現象になった理由も、作品の一部として見る
エヴァンゲリオンは、作品の中身だけで語りきれない作品でもあります。
当時のアニメ文化、インターネットが広がり始めた時代の空気、オタクという存在の扱われ方。
そうした背景と重なったからこそ、エヴァンゲリオンはただの人気アニメではなく、社会現象として語られる作品になったのだと思います。
作品の中では、シンジの孤独や人との距離が描かれます。
そして作品の外では、それを見た人たちが語り、考え、時には強い反応を返していきました。
エヴァンゲリオンを今から見るなら、物語の中だけでなく、なぜ多くの人がそこまで反応したのかという部分も、少し意識してみると面白くなります。
最初から全部分からなくていい
エヴァンゲリオンは、最初から全部を理解出来る作品ではないと思います。
分からなかった場所が残るからこそ、あとから考えたくなる。
納得できなかった場面があるからこそ、もう一度見たくなる。
そういう引っかかりを残したまま、多くの人に語られてきた作品です。
まずは、使徒と戦う物語として始まったエヴァンゲリオンが、少しずつシンジの内面へ向かっていく流れを見る。
そのあとで、旧劇場版、新劇場版へ広げていくといいと思います。
分からなさごと、当時の熱に触れてみる
エヴァンゲリオンは、分かりやすく説明してくれる作品ではありません。
でも、だからこそ多くの人が引っかかり、語り、考え続けた作品でもあります。
最初は全部分からなくていいと思います。
まずは、世界を救う話として始まった物語が、ひとりの少年の内面へ向かっていく流れを見てみる。
そこに、当時の熱や、今もエヴァンゲリオンが語られ続ける理由が少しずつ見えてくると思います。
